ギモン解決!ITILのインシデント管理まとめ

TOP > ITILのインシデント管理について > ITILはとりあえずインシデント管理だけするのは間違い

ITILはとりあえずインシデント管理だけするのは間違い

企業のIT運用業務を合理化し、コストも適性化するというのがITILです。
多くの企業は、場合によっては命取りにもなる顧客サポートに対してのみ敏感で、ITILの中でもインシデント管理だけに興味を持つことがよくあります。
インシデントというのは顧客からのリクエストの総称で、トラブルに対する要望や不具合の報告などあらゆるサービスを含みます。
インシデント管理が適切に行われていると、サービス停止という最悪のトラブルを最小限に抑え、顧客満足度を保つことが出来るからですね。
確かにインシデント管理では、過去事例などを素早く調査し、スピーディーに最善の対応を取れるという意味では非常に有効です。
近年日本の企業でも、大事なのはその場で根本原因を究明することではなく、サービスを維持することを最優先する考え方が浸透して来ました。
旧来のサービスサポートでは、不便を強いられている顧客は二の次で、原因の追究を始めてしまうケースも少なくありませんでした。
大切なのは優先度で、まずは取り敢えずでも何とか使える状況にすることを優先する企業が増えているのは素晴らしい変化でしょう。


ただし、本来のITILの考え方として、興味のあるインシデント管理だけを導入するというのは誤りです。
ITILを活用したITサービスは、プロセスごとに切り分けてしまったら効果を出すことは出来ません。
インシデント管理ではすべてインシデントを記録することから始まりますが、これはこの先起り得るインシデントを摘み取るための貴重な情報です。
単に記録して情報を蓄積しているだけでは、宝の持ち腐れですね。
内容を十分に分析して次のプロセスの問題管理につなげなければ意味がありませんし、その結果先回りしてシステム変更をかける検証も必要です。
ITILのサービスサポートは、インシデント管理からスタートし、構成管理に至るまで一貫して実装することが重要。
もちろんそれぞれのプロセスの中から自社が活用すべきものをピックアップするのは良いですが、一つのプロセスのみ取り出しても意味はないのです。


ITILはガイドラインであり、教科書であり、ノウハウ本です。
それそのものがシステムではありませんし、規格化されたものでもありません。
企業がIT運用を続ける限りずっと取り組み続けるべきものであり、終わりがあるものでもありません。
何時何時までに導入しなければいけないという性質のものではなく、一般の開発プロジェクトとも異なることを理解する必要があります。
例えば、ITILを謳った製品を導入しても、それは単に道具を揃えただけで、まだ何も始まっていないことを知らなければいけませんね。
ITILの啓蒙で良く言われるのは、Process、People、Productです。
ITILを活用するにはIT部門全体の業務見直しが必要ですし、改革をし続ける強い意志が必要。
ITILを導入しさえすればすべてを解決できるというほど、単純なものではありませんね。
大きな投資をしたのに成果が感じられないというなら、システムではなく自社の問題点に目を向けるべきでしょう。

次の記事へ